「なんでそんなこともわからないの!!!」
………
あの時伝えられなかったことを
伝えたくて書き始めたのが
オヤビンとコブンの社会問題シリーズでした。
オヤビンとコブンを描き始めたきっかけ
ある日、私はショッピング施設の一角で
ソファに座ってパソコン作業をしていました。
すぐ隣に少女がいました。
少女は参考書に向って「はっ、はっ」と息詰まるような感じで
懸命にペンを走らせていました。
尋常ではない何かを感じると、目の前から
声が聞こえてきました。
「なんでそんなのもわからないんだ」
男性のイライラした声でした。
女の子はパニックになりながら
「はい…っ はい…っ」と返事をして、
とにかく一生懸命ノートを書きなぐっていました。
せきたてるように「あと何分以内にやれ」と話す声。
私自身も焦りを覚えました。
少女を否定する声、怒る声がフロアに響きました。
私は怖くなりました。
「どうしたらいいんだろう」と思いました。
そして瞬間
過去のことを思い出しました。
…
私も小学生の時、勉強のために母親が買った参考書で勉強していたことがありました。
しかし、わからない問題があるとすごく焦りました。
なぜなら、
解けないと親に怒られるからでした。
「なんでそんな問題も解けないの」
そう言われるたびに、
すごく気持ちが落ち込みました。
あと、怒る声が怖かったです。
だから家での勉強の時間が嫌になりました。
学校に行くのはいいけれども、親の部屋で勉強するのが
一番怖く、嫌いな時間でした。
親がいない間に「解くように」と言われていた参考書も
わからない問題があると、すぐに参回答書を探しました。
怒られたくないからです。
親の箪笥のどこかにあることは分かっていたので、
「親が帰ってくる前に!!」と一生懸命探して答えを書きました。
でも、全部合ってると疑われると思って、
適度に(わかる解答を)間違えて書きました。
答え合わせの時間、わからないことがなければ
親に怒らないで済む。
それが私にとって救いだったんです。
…
過去の経緯から
隣で怒鳴られる少女が、自分のように思えました。
少女に放たれる言葉が自分に浴びせられる言葉のように聞こえて
私も辛かったのです。
子どももイライラしながら
涙交じりで、しかし一心不乱に勉強に取り組んでいましたが
あまりにもかわいそうに思いました。
私は心の中で葛藤しました。
「ああ、このままだと
この子の心が壊れてしまう…」
「なんとかできないだろうか…」
「神様、本当にどうしたらいいでしょうか?」
「この子の隣に居合わせましたが、
私に何かできないでしょうか!?」
その時、瞬間目をつぶって祈りました。
何をしたらいいのかわからないけれど
なんとかしたくて祈りました。
すると、ひとつの気持ちが生じました。
「何かあの子のためにプレゼントを買おう」と。
お店が近くにあったので、
何か少女に渡したくて探しました。
3つくらい、買いました。
クッキーと、癒やしグッツだったかな…
店員さんにプレゼント用に梱包してもらいました。
その間、フロアから少女の親の声が聞こえたのですが
そろそろ帰ってしまいそうでした。
「やばい、どうしよう」
「もう行ってしまうのかな??」
「間に合うかな…???」
会計を済ませて焦る気持ちでもう一度あの場所に戻ると
まだ少女も両親もいました。
ほっとしたのもつかの間…
私はプレゼントを持ったまま
お父さん、お母さんと子どもの周辺を
うろうろうろうろしました。
うろうろうろうろ
「なんて言って渡そうか…」
うろうろうろうろ
「これを渡して
少女の親になんて思われるだろう…」
うろうろうろうろ
「親を責めるつもりはないのだけれど…
渡したら何か言われるかな…」
そうやってうろうろうろうろしているうちに
ついに子どもも席を立ちあがって帰ってしまいそうでした。
私はぐっ!!と意を決して
声をかけました。
「あの、すみません!これ…」
プレゼントを見せました。
少し驚いた表情のお父さんお母さんの前で言いました。
「私も昔、頭が悪かったんです」
途端、私は号泣しました。
ほんとは少女が泣きたい気持ちだったろうに
私の方が大号泣してしまって…汗
さすがにお父さんお母さんも困惑していました。
私は少女に近づいて少女の肩をさすりながら
プレゼントを渡し
咄嗟に言いました。
「がんばってね〜〜〜〜っ
大丈夫だよ〜〜〜〜〜ッ
がんばってね〜〜〜〜ッ」
何度も何度も。
私も脳がパニックになっていて
出てくる言葉は同じ繰り返し…
少女はただ「はい、はい・・・」と返事し、
泣きそうな表情をしていました。
そのあとその場にいたお父さんは、こう言いました。
「自分も少し言い過ぎたと思っている」
お母さんは
「すみません、すみません」と、
話していた気がします…
そのあと、三人に頭を下げて
その場を去りました。
その時、自分の心は
嬉しい気持ちと、後悔の気持ちとが二つ混じっていました。
嬉しい気持ちは、
こういう状況を前にして、何もしないで立ち去ったのではなく
行動を起こせた、という心から湧き上がる嬉しさでした。
しかし、それと同時にあったのは、
後悔。
「もっと他の言葉をかけられたんじゃないか」
「がんばってね〜だなんて、あの子が一番がんばってたのに…」
「ちゃんとした言葉を伝えられなかった」
本当は…
本当は、神様があなたを愛しているんだよ、
ということも伝えたかった
伝えたかったけど、言えなかった…
…
ちょうど結愛ちゃんの虐待事件がしきりに報道されていた時期でした。
そのニュースを見るたびに、あの時の出来事が思い出されました。
そしてその年の10月。
社会問題を扱いながら
オヤビンとコブンという作品を書こうと決心し、
11月に一作品目を投稿しました。
最初の物語は「虐待」を扱いました。
あの少女に向けて、伝えきれなかったことを
作品に込めて伝えたかったからです。
少女編は一話だけ書いて
終わりにしようと思っていました。
しかし「続き楽しみにしています!」という声を聞いて
続きを書いていくうちに、3年以上も続く作品が生まれました。
あの時の少女に伝えたかった「神様の愛」を
これ程にも多くの様々な社会問題を扱いながら伝えることになるとは
私自身思ってもいませんでした。
親と子、社会の歪み…
日本の歴史と社会を知れば知るほど
私は神様の愛の必要性をひしひしと感じます。
だから伝えたい思いを
続けて作品に込めていきたいなと思います。
うまく伝わらないのだとしても
伝わるまで、根気強く…。